塩ビ管のつぶし資料1:断面積が等価な楕円、小判型
尺八の管径曲線(内径分布)は、rin3氏のデータによって、与えられている。
塩ビ管の場合、管を加熱し、前後から押さえつけて「つぶす」ことによって、同じ効果を得ようとしている。
ところが、問題は、rin3氏のデータは、あくまで断面が円であるのに対し、塩ビ管では、楕円(もしくは小判型)に近い断面となることであり、円の内径を絞って鳴りを良くしている効果を楕円(もしくは小判型)で得るために、短径を等しくすれば良いのか、平均径を等しくすれば良いのか、あるいは、断面積を等しくすればいいのかということである。
この問題については、さらなる研究に委ねたいと思うが、ここでは、断面積を等しくするためには、管をつぶして、短径をいくらにすれば良いかを示すことにした。
<参考>Oh!zanさんのお話
塩ビ管を作り始めの頃,つぶしの最も小さい径の部分を短径(直径)5ミリから18ミリまで1ミリ刻みで作りました。
もちろんその頃のデータを取ってありますので、見たところ,短径8ミリは,甲ロはなんとか鳴るのですが,乙ロはまるっきり駄目とあります。
このページを見て、再度やってみなくてはと奮起し,作ってみました。でも、案の定,上記通りでした。
つぶしは,短径13ミリ以上,17ミリ以下なら大差ないと思われます。
ということで、竹製尺八の内径の断面積と等しくなるような寸法の楕円(小判型)につぶすという考え方は、妥当性が乏しいようです。
まず、前提として、
R:つぶす前の元の半径
a:つぶした後の長半径
b:つぶした後の短半径
r:等価な円の半径(この半径の円と断面積が等しくなる楕円もしくは小判型の寸法を求める)
とする。
計算の方法は、
つぶす前とつぶした後の周長が変わらないと仮定し、
その場合のa,b,Rの関係を求めた上で、
断面積が、半径rの円と等しくなるような形状となるa,bを求めるものとする。
楕円の場合
まず、つぶした形状が楕円になると考えた場合について、求める。
楕円形状の例を下図に示す。
楕円の方程式は、
x^2/a^2+y^2/b^2=1・・・(1)
又は、
x=a*cosθ・・・(1-1)
y=b*sinθ・・・(1-2)
で表される。
楕円の周長は、初等関数では求まらないので、近似法を用いる。
s:楕円の周長
p=b/a:楕円の短長比
とし、s/aとpをグラフ化すると、図1のようになり、
3次式で近似すると、
s/a=c*p^3+d*p^2+e*p+f・・・(2)
但し、
c=-0.7615
d= 2.2495
e= 0.8374
f= 3.9552
(0.1≦p≦1.0)
となる。
まず、周長が、つぶす前の円に等しいとして、
s=a(c*p^3+d*p^2+e*p+f)=2πR・・・(3)
即ち、
a=2πR/(c*p^3+d*p^2+e*p+f)・・・(3)'
という関係が求まる。
次に、断面積が半径rの円に等しいとして、
楕円の断面積は、πabであるから、
A=πab=πa^2*p=πr^2・・・(4)
即ち、
a=r*sqrt(p)・・・(4)' (sqrtは平方根(ルート)を表す。)
となる。
(3)'式と(4)'式から、
r/R=2π*sqrt(p)/(c*p^3+d*p^2+e*p+f)・・・(5)
という関係が求まる。
これらから、つぶす前の内径を20mm即ち、
R=10
として、
pを0.1から1.0まで変化させたときのr,a,bを求め、rとa,bの関係としてグラフ化したものが、図2である。
このグラフより、R=10の場合の楕円の寸法が求められる。
小判型の場合
次に、つぶした形状が小判型になると仮定する。
(実際には、楕円と小判型の中間的な形状となると思われる。)
小判型形状の例を下図に示す。
小判型の周長は、
L=4(a-b)+2πb=4a+(2π-4)b・・・(6)
で示される。
まず、周長が、つぶす前の円に等しいとして、
L=4a+(2π-4)b=2πR・・・(7)
と置くと、
a=(πr-(π-2)b)/4・・・(7)'
となる。
次に、小判型の断面積は、
A=4b(a-b)+πb^2・・・(8)
であり、これに(7)'式を代入すると、
A=2πRb-πb^2・・・(9)
が得られる。
これが、半径rの円の断面積に等しいとして、
A=2πRb-πb^2=πr^2・・・(10)
即ち、
b=R-sqrt(R^2+r^2)・・・(10)'
が得られる。
これらから、つぶす前の内径を20mm即ち、
R=10
とすると、図3が得られる。